しじまの里

オタクもすなるブログといふものを、静寂もしてみむとてするなり。

PUNCH☆MIND☆HAPPINESSのお時間

春アニメも続々と最終回を迎えるこの頃ですが、そんな春アニメの中で印象に残った主題歌はあるでしょうか?
様々な曲が挙げられるとは思いますが、やはり「あんハピ♪」OPの「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」を挙げる人は多いのではないでしょうか。少なくとも私はこの曲を挙げます。
田中秀和氏、畑亜貴氏による渾身の一発たるこの曲にMINDをPUNCHされてHAPPINESSした方も多いと思われますが、その秘訣とは何なのでしょうか?というのが今記事の話題となります。
パッと聴いただけでもあふれ出るこの曲の変態性を、少しばかり解説してみたいと思います。

ちなみに今回取り上げるのは、TV版ではなくFull版です。故にFull版の曲構成のネタバレが含まれております。ご了承ください。

 

PUNCH MINDとHAPPINESS

まずは結論、この曲の持つ"秘訣"とはどのようなものかについて、からお話しいたします。ずばり「PUNCH MIND(意表を突く、インパクトを与える、翻弄する)」と「HAPPINESS(多幸感、幸福感)」かと思われます。
後者は「あんハピ♪」が「幸福」をテーマとしていることから必然的なもの、また前者についても、「あんハピ♪」という作品の特徴に合致したものと言えるでしょう。
これから、その「PUNCH MIND」「HAPPINESS」について詳しく掘り下げていきたいと思います。

 

イントロ

イントロは曲の持つ性格を提示する目的と同時に、聴衆を引き付ける目的があります。それを鑑みると、この曲のイントロのクオリティの高さがお分かりになると思います。
そんなイントロのクオリティの秘密は、パンwwwwwwwwwパンwwwwwwwwwパンチマインドwwwwwwwww印象的なリズム、そしてaugコードでしょう。


パンwwwwwwwwwパンwwwwwwwwwパンチマインドwwwwwwwwwに関しては、もう言うまでもないでしょう。語感も相まって、物凄く印象的なコールに仕上がっています。印象的なリズムも、シンプルかつ頭に残るものを、前述のコールと絡めて提示していることが分かります。
最後のaugコードですが、おそらくこれが、このイントロをこのイントロたらしめる要素です。
「コード(Chord)」とは、曲を構成する要素として挙げられる「メロディ」「リズム」「ハーモニー」における、「ハーモニー」の部分です。augコードは独特な響きを持つコードであり、それをイントロに組み込むことによって聴衆を引き付け、またこのイントロを特徴的なものとしているのです。
このaugコード独特の、お道化たような響きが「HAPPINESS」要素とも言える、ということです。どことなくはなこっぽいコード 略してはなコード
イントロ内の管楽器によるリフについても、augコードの響きに合わせて、所々に音階から外れた音を用いており、お道化たような効果をもたらしております。ズコー効果

 

以上の三要素を、再生直後に耳へブチ込むことによって、聴衆を引き付けつつ「PUNCH MIND」「HAPPINESS」させる効果が発生するのです。
さらに、この三要素のうちaugコードは、イントロ以外でも、(mM7などの類似コード含め)曲全体に頻出し、この曲の「HAPPINESS」要素の一つを担っております。

 

Aメロ

Aメロにおいて、ピアノが裏打ちのリズムをとっています。ンッチャッンッチャッってやつです。
行進曲でも使われていたり、所謂「四つ打ち」のリズムにおいてハットが裏拍を強調するように、裏打ちのリズムは軽快さを表現できます。この裏打ちのリズムによって、この曲は軽快さを増し、「HAPPINESS」効果が生み出されます。
先程例に出した「四つ打ち」もこの曲で使われており、これも「HAPPINESS」効果を生み出してると言えます。
軽快さの表現としてはもう一つ、ウォーキングベースが挙げられます。ウォーキングベースとはジャズなどで用いられるベースラインで、一定のリズムを刻みつつ旋律を展開するというものです。
Aメロでは四分音符の間隔でベースが旋律を奏でており、さりげなく軽快さを演出しております。

 

この曲は全体的に軽快さがありますが、ここで述べたように、Aメロでは特に意識しているような気がします。ピアノの裏打ちなどからそれを強く感じます。

 

Bメロ

「そうだね」の部分をフックとしてBメロに入りますが、ここで曲の雰囲気がガラリと変わり「PUNCH MIND」しています
Aメロでも使われていたウォーキングベースが八分音符間隔になり、さらにエレキベースではなくウッドベースに変わっております。ドラムもライドシンバルを打っており、ジャズ調になっているのが分かると思います。
そして、ウォーキングベースが八分間隔になることやライドシンバルのリズムなどによって、一種の焦燥感が生まれ、どこか不安定な感覚を覚えます。これについては、ドミナントモーションの仕組みにも用いられている「不安と解決」の概念における「不安」の部分に該当すると思われます。
Aメロとサビのつなぎに位置するBメロの性格に合致しており、「不安と解決」のもたらす効果を考えると「HAPPINESS」要素とみなすことが可能です。
いきなりジャズ調になっても曲の整合性を保つ秘訣としては、ピコピコと鳴っているシンセがつなぎの役割を果たしていることが考えられます。

そして「にーげちゃったーよーーーーーーーー」をつなぎとしてサビ前に曲の雰囲気が戻り、イントロで使われたリズムを再び用いつつ、「こーっち!」とサビへ導いていきます。ここで管楽器が再び登場しており、リズム共々、イントロにおいて伏線が張られていたことが分かります。

 

サビ~Aメロ(2コーラス目)

サビでは管楽器がふんだんに用いられており、サビ前での管楽器の再登場、ひいてはイントロにおける伏線が活きていることが感じられます。
金管楽器の音は、ファンファーレでも用いられる通り、祝祭的な響きを持ち、それによってこのサビに多大な「HAPPINESS」効果をもたらします。
「生命力アップだ ~」の部分の半音ずつ上がっていくメロディーも、否応なしに高揚感を掻き立てることから「HAPPINESS」要素と言えます。
そしてサビが終わるところで、TV版に慣れ親しんだ聴衆は、突然の転げ落ちるようなフレーズに衝撃を受けます。これは登場人物に降りかかる「不幸」の暗喩であるとともに、れっきとした「PUNCH MIND」要素でしょう。何事もなかったかのように慣れ親しんだAメロに移行するのも、降りかかる不幸をものともしない「はなこ味」を感じます。はなこ味とか美味しそう
2コーラス目のAメロでは「誤魔化せるかもね」相当の部分で、1コーラス目と微妙にメロディを変えています。これについては、1コーラス目の合いの手が「なんとでもなるさ」と受動的なのに対し、2コーラス目は「なんとかしちゃうよ」と能動的な表現になっているのと関係がありそうです。

この後Bメロに入ると予想した聴衆は、Aメロが終わった時に入るものが「そうだね」ではなく、「ッテーン!」というピアノの音であることに気づきます。そこである程度身構えることができた聴衆は、「PUNCH MIND」効果を受けつつ、スムーズに次の曲展開を迎えられます

 

間奏~Bメロ変形~大サビ

ピアノの音をきっかけとして入った間奏において、合いの手的なベースのフレーズが、ウッドベースエレキベースと使い分けられております。Bメロでもウッドベースが使われていましたが、間奏の前半ではその使い分けが顕著に表れています。このカオティックな使い分けは、どこか「PUNCH MIND」的と言えるかもしれません
そして転調を交え、ソナタの展開部めいた様相を呈する間奏で「PUNCH MIND」された後、(おそらく半音程度)キーが下がっていることが分かります。また、間奏後のパートはBメロを基本としておりますが、コード進行やメロディが若干異なります
これは、聴衆の意表を突いた「PUNCH MIND」的でありつつ、慣れ親しんだBメロのフレーズで安心感を与える「HAPPINESS」的であるとも言えます。秀逸です。


そして半音上げ的方法論で元のキーに戻して大サビに突入します。「未来がキレイに ~」部分などが全員での歌唱になっていたり、サビの最後のフレーズを繰り返したり、大サビらしい大団円めいた要素が加えられております。
最後の「パンwwwwwwwwwパンwwwwwwwwwパンチマインドwwwwwwwww」もTV版より長く、スネアドラムの連打など、より高揚感を与える要素が与えられ、聴衆が「HAPPINESS」状態になっているところで、円満に曲が終わります

 

あとがき

冗長に語ってしまいましたが、要するに私の言いたいことは「この曲は聴衆のMINDを、トリッキーな展開などでPUNCHした後、そのキャッチ―さなどでHAPPINESSにする合法ドラッグである」ということです。世が世ならしょっぴかれそうですね。
そして私は記事を書きながら、この曲の恐ろしさを痛感しておりました。やべえ
これからもこの曲は、聴衆を文字通り「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」していくことでしょう。

この記事を読んで「ついてる」と感じた方も感じなかった方も、私の拙文を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。